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【寄稿】蛮勇か、勇気ある挑戦か(WEB版)/大﨑一万発

投稿日:2021年5月31日 更新日:

久しぶりに赴いた東京近郊の某店が、なかなかに個性的なパチンコ運用をしていたのでご報告します。来訪当日はいわゆる特定日、開店前には若者を中心に100人を超える行列ができており、大半はパチスロのシマに走る、のは想定内。目当てのパチンコ新台があった僕は、最後尾から入店し台を選びました。も、いまひとつ状況が芳しくない。最新の3機種を計2万円打ったのですが、さして甘いスペックでもないのに千円スタートにして平均12回転(等価交換営業)の惨憺たる状況。別の新台を狙った同行者も同様で、これはどうしたことかと首を捻りつつ北斗無双を打ってみると……、こちらは一転。千円18回(右は若干減る)と赤字運用バリバリの優秀台でありました。

今どきのパチンコ営業では、機種毎に運用メリハリがあるのは当たり前とはいえ、ここまで上下振り切って使う店はあまり記憶になく、打ちながら管理者の意図を想像してみたのです。立地、設備、看板、規模、いずれも商圏内で目立った店ではない。低貸以外は主に若い客層。パチンコは決して強くはないが、パチスロは平常でもそこそこ動いているし、特定日は強い……。なるほど、これはパチスロのやり方をパチンコにスライドさせたのではないか。「強いウリ」を作って若い客を引っ張ってこようとする営業なのではないかと。

その店で打ったのは初めてではなかったのですが、ほとんど1年ぶりの訪問で、その間に営業スタイルが変わったのでしょう。以前は「普通」の店だったのです。よく見れば当時とは店内装飾やシマレイアウトも一変して、ぐっと賑やかになっています。おそらくはパチスロが好きな若い新任の(?)店長が、今のパチスロ客の心理に合わせ、自分が打ちたい店やイベントを想定して作ったのではないか。パチスロはメリハリ設定が当たり前、店毎の強い機種・弱い機種も客は把握しているし、特定日が強い店には「ここは間違いない」ってコーナーも必ずあるものです。これをそのままパチンコに置き換えたとしたら……? そんな想像を働かせながら、ならば韋駄天と大海はどうだろうと移動してみると、やっぱり! 無双同様に等価とは思えぬ赤字仕様で使われており、また同一シマ内でもメリハリがつけてあって、「今日はメイン機種でいい台を探して、ガッツリ勝負してほしい」という店の意図が表れたメンテナンス状況でした。完全に若い客層に向けた施策です。

ただ、僕は一定のリテラシーをわきまえているからヘタれず前向きに探すこともできたのですが、ライトユーザーや年配客はどうでしょう。新台目当てならひどい店と感じるかもしれないし、甘デジやライトミドルの少台数機種も厳しい運用でした。海系も大海はいいが沖海はかなりキツい。もしかするとイベント明けの平常営業では打てる台がない状況かもしれません。実際、特定日にも関わらずパチンコはちょっと淋しい稼働状況で、「まだまだこれから」なのか「やけっぱち」なのかまでは読み切れなかったのですが、しかし無策に甘んじてジリ貧に陥りたくないというチャレンジ精神が窺われ、僕はその「変化」に大いなる好感を持ったのです。

悲しいかな通り一遍の営業を続ける限りは、稼働好転は望みづらいのがパチンコの現状です。秀でたウリのない店はリスクを取ってでも「何か」をやらなきゃ伸ばせないし、広く浅く万人ウケを狙うスタイルより、客を選ぶ勇気も必要な時代になっています。この店のやり方が奏功するか、狙った客層に意図が伝わるかはわかりません。常連客を飛ばし、プロに食われて大失敗に終わるかもしれません。しかしこのご時世、蛮勇かもしれないけれどやってみる、そしてそれを容認する会社の「前向きなやる気」は貴重だと思ったし、パチンコ好きとしてこういう店こそ応援したくなるもの。パチンコ店にはやっぱり、玉の出し方、イベントの作り方で勝負してもらいたいわけですから。家からは少々遠い場所ですが、(ウォッチ含みで)今後も継続して打ちに行こうと思った店でした。

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。

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