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【緊急寄稿】新型コロナウイルスによる緊急事態宣言とパチンコ店への影響/鈴木政博

投稿日:2020年4月7日 更新日:

3.緊急事態宣言によるパチンコ店の営業自粛
今回の緊急事態宣言では、公共交通機関の運行には変化がなく、また国民には不要不急の外出自粛の「要請」が、医療施設の開設や物資調達には知事の「強制」があると前述した。しかし、この「要請」でも「強制」でもない「指示」という部分がある。まずは特措法の当該部分をご覧いただきたい。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法」より抜粋


第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置
第二節 まん延の防止に関する措置
(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条
2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

4 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

ここでは「学校・社会福祉施設・興行場・その他の政令で定める多数の者が利用する施設」に「使用の制限・停止を要請」でき、要請に応じない場合は「指示」できるとある。したがって、応じない場合「要請」よりも一段階上の「指示」がなされる可能性があるという事だ。さらにその「指示」をした場合は「公表しなければならない」とある。

この条項には罰則規定がない。したがって「指示を守らせる強制力がない」ともいえる。ただし、都道府県知事から「○○店は休業するよう要請したが応じず、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示した」と公表される。それでその店が休業していればまだいいが、もし営業している場合、国民に「休業指示を無視して営業している店」と周知されるという状況が待っているという事だ。

それでは「パチンコ店」は上記のどれにあたるのか。「学校・福祉施設」でないのは当然として、もしや「興行場」にあたるのか。これは「興行場法」を紐解けば記されているが「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設」とあり、パチンコ店は当該施設ではない。では「その他の政令で定める多数の者が利用する施設」なのか。これについては、別途「新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令」の11条で定められている。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令」より抜粋


第十一条 法第四十五条第二項の政令で定める多数の者が利用する施設は、次のとおりとする。ただし、第三号から第十三号までに掲げる施設にあっては、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えるものに限る。
一 学校(第三号に掲げるものを除く。)
二 保育所、介護老人保健施設その他これらに類する通所又は短期間の入所により利用される福祉サービス又は保健医療サービスを提供する施設(通所又は短期間の入所の用に供する部分に限る。)
三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学、同法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する高等課程を除く。)、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校その他これらに類する教育施設
四 劇場、観覧場、映画館又は演芸場
五 集会場又は公会堂
六 展示場
七 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗(食品、医薬品、医療機器その他衛生用品、再生医療等製品又は燃料その他生活に欠くことができない物品として厚生労働大臣が定めるものの売場を除く。)
八 ホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る。)
九 体育館、水泳場、ボーリング場その他これらに類する運動施設又は遊技場
十 博物館、美術館又は図書館
十一 キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールその他これらに類する遊興施設
十二 理髪店、質屋、貸衣装屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
十三 自動車教習所、学習塾その他これらに類する学習支援業を営む施設
十四 第三号から前号までに掲げる施設であって、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えないもののうち、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等の発生の状況、動向若しくは原因又は社会状況を踏まえ、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため法第四十五条第二項の規定による要請を行うことが特に必要なものとして厚生労働大臣が定めて公示するもの

この九に「遊技場」とある。「遊技」とは「遊戯」と異なり、技を競う要素がある遊びだ。一般に遊技場といえば「ボーリング場、ビリヤード場、パチンコ店など」を指すが、法律上では以下の法律にその記載が確認できる。

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」より抜粋


遊技場営業者の禁止行為)
第二十三条 第二条第一項第四号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 現金又は有価証券を賞品として提供すること。
二 客に提供した賞品を買い取ること。
三 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
四 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。

2 第二条第一項第四号のまあじやん屋又は同項第五号の営業を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。

パチンコ店、雀荘が「遊技場」とすれば、今回の「緊急事態宣言」で休業の要請や、応じない場合は「指示」があるかもしれない。もちろん、大手チェーンはともかく中小規模の店舗が一か月も休業すれば、生き残るのは至難の業だ。もし仮に何らかの形で従業員の所得補償などあったとしても、家賃や遊技機の支払い手形だけでも莫大な金額になるのは想像に難しくない。

すでに大手パチンコチェーン数社は自主的な「営業自粛」を発表している。今後、正式な「要請」や「指示」がどのような業種にどう出されるかも予断を許さない状況だ。

かつて「娯楽の殿堂」と呼ばれたパチンコの灯が消えないことを、業界の一員として切に願いたい。

(以上)

■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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