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【緊急寄稿】新型コロナウイルスによる緊急事態宣言とパチンコ店への影響/鈴木政博

投稿日:2020年4月7日 更新日:

パチンコ業界はもとより、日本、果ては世界が窮地に追い込まれている。新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年4月7日、日本政府は緊急事態宣言の発令に踏み切った。東京都内では「パチンコ村」と呼ばれ遊技機関連メーカー、業界販社が数多く軒を連ねる台東区・東上野の中心にある「永寿総合病院」で院内感染が広がった報道も記憶に新しい。今回は、この緊急事態宣言の発令でなぜパチンコ店の営業自粛という事態につながるのか、その法的根拠も含めて業界への影響を考察してみたい。

1.緊急事態宣言とは?
現在、日本国において法的根拠のある「緊急事態宣言」は3つある。

一つ目は「警察法に基づく緊急事態の布告」。これは内閣総理大臣が国家公安委員会の勧告に基づき緊急事態の布告を発するもので、総理が一時的に警察力を統制して、警察庁長官を直接指揮監督することができる。

二つ目は「災害対策基本法に基づく災害緊急事態の布告」。非常災害が発生した場合に、それが経済、福祉に重大な影響を及ぼす異常かつ激甚なものである場合において、内閣総理大臣が災害緊急事態の布告を発することができる。ちなみに2011年の東日本大震災においては、菅直人首相(当時)は緊急災害対策本部を設置したものの「災害緊急事態の布告」は行わなかった。

そして三つ目が今回の「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく新型インフルエンザ等緊急事態宣言」だ。これは新型インフルエンザ等の急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合に政府対策本部長(現在は安倍晋三首相)が発令することができる。

ちなみに2020年2月28日に北海道の鈴木直道知事が出した「緊急事態宣言」や、過去2010年に宮崎県の東国原英夫知事が口蹄疫の流行に対して出した「非常事態宣言」などは特別法を発動するものではなく、法的根拠はないもので注意喚起要請に近いものとなる。また宣言ではないものの「緊急事態」という規定は自衛隊法にもある。こちらは侵略等の緊急事態で、警察力をもってしても治安を維持することができない場合に、内閣総理大臣が自衛隊の出動を命ずることができるものであり、有事の規定だ。

2.改正特措法による緊急事態宣言とは?
従来の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に新型コロナウイルス感染症を適用対象に加えた「改正特措法」は3月12日に衆院本会議、13日には参院本会議で可決し、成立。3月14日に施行されている。これにより政府は新型コロナの急速なまん延で国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合に「緊急事態宣言」が発令できるようになった。

そして4月7日夕、安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための改正特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。期間は4月8日から5月6日まで。対象区域として東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県を指定した。

では簡単に言うと、この「緊急事態宣言」が発令されるとどのような事が起こるのか。

すでに東京都では3月25日に小池百合子都知事から「感染爆発の重大局面」として都民に「週末および平日夜間の不要不急の外出」を自粛するよう要請していた。ただし都民が日常生活を送る上で必要な「食料品の買い物」や「医療機関への通院」などには自粛要請はなく、また職場への通勤も「テレワークを推奨」はしているものの制限はなかった。

結論から言えば、最低限の国民生活を送る上での行動については、今回の緊急事態宣言が出たことによる大きな変化はほとんどない、といえる。上記7都府県では知事から「不要不急の外出自粛の要請」があると考えられるが、国民として対策に協力する努力義務はあるもののあくまで「要請」であり、海外他国のような罰則がある訳ではない。また同じく「食料品の買い物」「医療機関への通院」「職場への通勤」は不要不急から除外されている。

交通機関についても、赤羽一嘉国土交通大臣が「公共交通や物流は、国民生活や経済活動を支える最重要のインフラであり、緊急事態においても必要な機能を維持することが求められるものと認識している」と述べており、首都圏などの対象区域で鉄道各社に対する減便の要請や新幹線の間引き運転などの検討はされているものの運行が止まるとは考えられず、その意味で他国でなされている「ロックダウン(都市閉鎖)」とは全く違うものだといえる。

国民生活としては大きな変化はないとして、違う点は何か。大きくは2つ。一つ目は特措法49条により「知事が臨時の医療施設を開設する場合に土地や建物の所有者の同意を得て使用するが、もし同意がなくても強制的に使用」できる点、もう一つは特措法55条により「知事が必要な物資(マスクなど医薬品や食料品)の売り渡しを要請し、応じない場合は収用」できる点だ。これには罰則規定もあり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となっている。強制力のあるのはこの2点のみだ。

では、なぜ今回「パチンコ店の営業自粛」という話が出ているのか。

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