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【コラム】遊技機企画開発への就職活動と必要な人材について

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ぱちんこ開発者の独り言㊱
有効求人倍率が2017年にはバブル期を超え、今や就職活動は空前の売り手市場(就職希望者にとって有利)である。

パチンコ(パチスロ)業界は昔から学生人気が低い業界ではあるが、どうしてもこの業界で働きたい、という学生が一定数いる業界でもある。その中でも最も競争率が激しいのが、ぱちんこ(パチスロ)メーカーにおける企画開発というポジションだ。

ぱちんこ機、パチスロ機というのは、映像、プログラム制御、スペック設計や役物開発など多くの担当者が製作し集結させ完成を目指すが、そのトータルプロデュースともいえるポジションが企画開発者である。Aという機械の開発に携わった人間は数多くいるが、最も開発したという言葉に相応しいのはプロデューサーやディレクターといった立ち位置を担う企画開発者であるのは間違いない。

そのため、ぱちんこ・パチスロが大好きな学生は、遊技機メーカーの企画開発部署を希望することが多く、この売り手市場においても新卒募集をかければ少なからず申し込みがあるのだが、多くの学生が知識やぱちんこ・パチスロ好きのアピールばかりでは採用に至らないため、下記の具体例を見て、今一度、就職希望者は一考していただければと思う。

学生:「御社のAという機械をよくホールで打たせていただいておりまして、大好きな台です。御社に入社し、是非ともAの次回作を開発したいと思っております」

面接官:「なるほど、それではAという機械のどこが面白いと感じたところですか?また、○○さんが開発者だとしたら、次回作はどのように開発したいと思いますか?」

学生:「アニメ(版権)の名場面をぱちんこで再現しているところは非常によくできていると感じますし、版権がわからない人へも会話予告などでのアプローチがバッチリできていると思います。決めの役物はスピードが速く爽快感があって、サウンドとの連携もうまくまとまっているところも好きなところです。スペックは私のようにお金がない学生でも、ツボにはまれば玉が出るスペックなので、演出・スペックともに大好きです」

学生:「もし仮に、次回作をもし担当させてもらうのであれば、今作では、赤保留が絡まないと大当りはほぼ期待できないので、そこは絶対に改善したいと思います」

よくありそうな受け答えの一例であるのだが、この内容では採用が難しいであろう。企画者にとって重要なポイントは、「どのようにして一人でも多くのユーザーを楽しませようとするか」というところである。そのため、基本的な考え方として「主観的」に物事を考えるのはNGなのである。

自分が面白いと思うものは、みんなが面白いと思うだろう。というのはいささか傲慢な理論であり、客観的な事実にも乏しくなる。「赤保留が絡まなければ大当りはほぼ期待できない」という機械の場合は他方では、「赤保留が出れば絶対の信頼度があり、一撃で期待が持てる」という言葉の裏返しでもある。このように、メリットとデメリットは表裏一体であることが多く、どちらがユーザーにとって正解か不正解かは、極端にいえば存在しない。そのため、ベストな判断というよりは、ある意図をもって開発し、その意図に沿った結果に導けるようにベターな判断をしていくという具合である。

仮に同じように返答するにしても、「A機の初当たりを100回させたところ、100回中80回赤保留が出現しました。赤保留の出現した回数は115回で大当りしたのは80回なので、信頼度は約70%と期待ができますので赤保留はワクワクできますが、一方で、大当りの5回中4回は赤保留出現となりますので、赤保留が出現しない演出はお客さんが期待を持てなくなりそうです。なので、信頼度は70%を担保した状態で、赤保留自体の出現率を下げれば、赤保留でワクワクできてかつ、その他の演出にも期待が持てると思うので、その他の演出にも力を入れて作りたいです」

といえば、その考え方が正解、不正解という判断は別にして、客観的な事実(出現率や信頼度)に基づいて考察し、ユーザーの気持ちを想像した上で、ベターと思われる判断をする。といった内容の受け答えができている、企画者にとって重要である柔軟な考え方ができるヤツだ、とアピールすることができるであろう。

学生の新卒に、テクニックや知識量は求めていない。開発方法も各社違いはあるし、何が正解で何か不正解という絶対的な答えが存在しないのが遊技機の開発である。下手にテクニックでアピールするよりは、真面目に取り組む姿勢をアピールする方がよっぽど採用に近づくことはお伝えしておく。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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